三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

新たなる「勤勉革命」のすすめ

速水 融(歴史人口学者)

2017年2月号

 —先生が発表した「勤勉革命」の概念は、世界の歴史学会に定着しました。研究の発端は何ですか?

 速水 ヨーロッパ留学中に、フランスの学者が教会の記録を基に、中世の家族の様子を復元しているのを見て、非常に感銘を受けた。これによって近代的統計のない時代を理解できた。
 帰国後、日本で、江戸時代の宗門人別改帳を調べてみたら、むしろこのほうが詳しかった。濃尾地方の村を調べた際、十八世紀のある時期に人口は三〇%増えたのに、牛馬の数が半分以下に減っていた。その理由を探るうちに、農家の労働生産性が向上し、人間が牛馬の仕事を果たせるようになって、牛馬が不要になったことが分かった。
 江戸時代の日本は、人間がより働くことで経済発展を遂げた。これが「勤勉革命」(Industrious Revolution)だ。

 —人間が牛馬に代わって苦役をしたということですか?

 速水