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社会・文化

福島廃炉は今世紀中に終わらない

「四十年・八兆円」プランの虚妄

2017年7月号

 福島県民は多くを知らない―、そのことに、一部の原子力関係者の不安と義憤は募る。
「1Fは、このままではサグラダ・ファミリア(聖家族教会)になるぞ!」
 1Fこと福島第一原発の廃炉をめぐり、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が七月に発表する「技術戦略プラン」の策定が大詰めを迎えている。プラン策定は三度目であり、今回は二〇二一年の燃料デブリの取り出し開始に向け、メルトダウンした一~三号機の号機ごとの工事計画が固まる。ロボットやマニピュレーターの開発も本格化し、まさに廃炉の実践プランとなるものだ。
 しかし、肝腎の期間と費用はざっくり四十年、八兆円と曖昧なままであり、逆に喧伝されているのは燃料デブリの「全量取り出し」の方針だ。おそらく福島県民の大半は、四十年、八兆円を費やせば、1Fはきれいに「更地」になると思い込んでいるだろう。しかし、原子炉格納容器の底部に飛び散った燃料デブリの回収は前人未到の事業なのだ。あるNDF関係者は打ち明ける。
「三基合わせて約八百八十トンのデブリのうち、回収できるのはせいぜい半分。が、そのことを県民に知らせていないの・・・