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IS「巨額余剰金」が世界に流出

「数百億円」が米欧でのテロ資金に

2017年10月号

 イスラム教過激派組織「イスラム国(IS)」が、イラクとシリアでの支配地域の壊滅を目前にして、これまでに稼いだ巨額の余剰資金隠しを急いでいる。西欧や米国のIS同調者に送られ、テロ資金に流用される可能性が高いと見られ、各国の治安当局者は捜査に苦慮している。
 警戒の高まりは、シリア国境に近いトルコの諸都市で明らかだ。「ISが大量の現金をシリアからトルコ国内に持ち込んで、米欧に送金しているとの情報がある」(在トルコ英国人記者)ためで、主要都市アンタキヤやガジアンテプでは、市内に多い中小の通貨両替店や海外送金業者が、トルコ当局の監視下に置かれているという。
 アンタキヤはローマ帝国時代に「アンティオキヤ」と呼ばれた古都である。歴史的にも地理的にもシリアの文化圏にあり、シリア側の古都アレッポからわずか百二十キロメートルの距離にある。
 市の郊外には巨大なシリア人難民キャンプがあり、ISが紛れ込むには格好の舞台を提供している。アンタキヤのあるハタイ県には、人口(約百五十万人)の三分の一にあたる、五十万人ものシリア難民がとどまっているとされ、現地当局は難民管理だけです・・・