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WORLD

中国が仕掛ける「世界漁業戦争」

「国策」遠洋船団が地球規模で乱獲

2017年10月号

「さんま祭りが開けない」「イカが食卓から消える」
 漁業資源枯渇のニュースが続くたびに、「中国の乱獲が背景にある」とのもっともらしい説明がつく。だが、中国の遠洋漁業船団が約三千隻もの規模に膨れ上がり、習近平・国家主席の政権は、地球の裏側で衝突を起こすのを厭わないことは全く知られていない。中国は地球規模での漁業戦争を仕掛けているのだ。
「これはハイブリッド戦争にほかならない。漁業戦争が到来している」と警告したのは、米海軍退役提督のジェームズ・スタヴリディス元欧州連合軍最高司令官である。九月中旬の米「ワシントン・ポスト」紙への寄稿の中で、地球上の漁業資源獲得のため、中国政府が漁民だけでなく、軍事力も動員していることを厳しく批判した。
 ハイブリッド戦争とは、住民同士の衝突や各種インフラ崩壊により国内騒乱を引き起こした上に、軍隊が侵攻するという、複合的な戦術のことである。二〇一四年のロシアによるクリミア半島併合がその典型とされ、以後、軍事関係者の間で多用されるようになった。
 スタヴリディス氏は、同司令官を退任した翌年に、クリミア危機を目の当たりにした・・・