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社会・文化

躍動する「東大運動部」

「秀才アスリート」強化育成の舞台裏

2017年11月号

 判官贔屓―。広辞苑には「弱者に対する第三者の同情や贔屓」とある。十月八日に東京大学の野球部が、十五年ぶりにリーグ戦の勝ち点を挙げたというニュースに胸がすくような思いがするのは、この日本人特有ともいわれる判官贔屓の心情だろう。相手となった法政大学のスターティングメンバーのうち、実に六人が甲子園経験者だった。ただ、これは「運動のできないガリベンが野球エリートを破った」といった類いの奇跡の話ではなく必然だった。最近、野球部だけでなく東大の運動部の実力がじわじわと上がっているのだ。
 東大体育会という組織は存在しない。他大学の体育会、つまり運動部の集合した組織を東大では伝統的に「運動会」と呼ぶ。二〇一三年に一般財団法人となった東大運動会の傘下には、五十以上の公認クラブがある。一番有名なのは、今回歴史的な勝ち点を獲得した硬式野球部だ。万年最下位にもかかわらず、歴史的経緯から国内トップレベルの東京六大学リーグの一員であり続ける宿命を背負う。東大野球部は二年前までワースト記録となる九十四連敗をしていた。そのどん底から昨年はいくつかの勝ち星を残し、今年は勝ち点を獲得できるところまで強化して・・・

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