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連載

日本の科学アラカルト91

ビジネスチャンスにも直結 「合成人工骨」研究

2018年3月号

 哺乳類が地上で活動できる理由の一つが「骨格の存在」だ。筋肉もある程度の強度を持っているが、いわゆる「肉」だけでは地上で体を支えることは難しいだろう。「骨」によって、体を支えると同時に、筋肉の伸縮を運動に変えることで、人間をはじめとする多くの動物が地上で活発に動き回ることができる。当然、骨が損傷した場合の代償は大きい。特に足の骨が折れれば、自然界では死にも直結する。人間の生活でも大きな支障が生じるが、骨が失われると代替は難しい。
 また栄養摂取のために欠かせない骨の一種が「歯」だ。延々と前歯が生え続けるげっ歯類のネズミや、何度も新しい歯に生え変わる鮫のような生物と異なり、人間の歯(永久歯)は失われると新たに生えることはない。
「再生医療」が注目されて久しいが、内臓や目、皮膚といった器官だけでなくこうした骨の再生も重要なテーマの一つであり、日本国内でも最先端の研究が続けられている。
 今年二月十五日、歯科分野における新たな「人工骨」治療が正式に承認されたことが発表された。九州大学で開発された人工骨を歯科用の治療に使える実用化の道が拓かれたのだ。
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