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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》「がん告知」の闇

誤診だらけ「病理検査」の実情

2018年5月号

「末期がんが消えた」「末期がんからの生還」。免疫療法、温熱療法、さらには水素イオンの利用まで、今やがんの民間療法は百花繚乱の様相だ。それが等しく有効ならば、生死の淵をさまよう人にとっては救いの神だが、中には胡散臭い治療も少なからず紛れ込み、真贋の見極めがつかない。だが、数多ある療法の効果の有無とは別次元の重大な問題が頻発している現実は見落とされている。「奇跡の生還」を検証すると、最初に末期がんと告知されたにもかかわらず、それが誤診であることを知らされていない本人や家族が、完治したと誤認している事例が少なくない。
 虚実ない交ぜの宣伝が跋扈する末期がん治療の陰で、病理診断という出だしの根幹で過誤を頻発させている病理医の暗部に迫る。
「奇跡のがん治療を生み出すのは病理医であり、私も数多くの『奇跡』を目の当たりにしてきた」。東北地方在住の病理医X氏はそう打ち明けた。病理医は検査のために組織の一部を採取する「生検」で得た検体を顕微鏡で観察し、がんか否かの最終的な診断を下す。X氏もその一人。実は、病理医が奇跡のがん治療を生み出すというのは強烈な皮肉だ。どういうことか。彼の経験・・・