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連載

《世界の キーパーソン》アレクサンドル・ド・ロスチャイルド(ロスチャイルド銀行次期会長)

名門の改革を託された三十七歳

2018年5月号

 世界史に燦然と名を残す名門銀行「Rothschild & Co」の会長に五月、就任する。十八世紀にマイアー・アムシェル・ロートシルト(各国語で読み方が違うが本稿ではロスチャイルドに統一)が、ドイツ・フランクフルトで金融業を始めてから、数えて七代目だ。
 ユダヤ人のマイアー・アムシェルには二人の天才、三人の堅実な企業家という計五人の息子がいた。
 天才の一人で三男のネイサン・メイヤーは英国に渡って、ナポレオン戦争の激動期に経済封鎖破りで荒稼ぎをし、ビクトリア朝で「大英帝国の銀行家」になった。
 もう一人の天才、五男のジェームズは、パリで開業した。ナポレオン時代、ブルボン家の復古王政、七月王政と、次々と体制が変わる中で莫大な富を蓄える。ナポレオン三世時代に、帝国第一の銀行家になり、貴族に列せられた。以後のフランスのロスチャイルド家は「ド・ロッチルド」である。他の兄弟は、フランクフルト、ウィーン、ナポリで大銀行を作った。
 七代目はフランス家の直系。父親の時代に、ロンドンとパリの事業が統合されたため、三十七歳のアレクサンドルが名門の総帥になる・・・