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政治

幻想に終わる安倍「成長戦略」

官民「インフラ輸出」は総崩れ

2018年6月号

 安価な白熱電球で十分だと考えている客に、高額のLED電球を売りつけるのは容易ではない。海外に鉄道、原子力発電所、水道など日本がノウハウを持つインフラストラクチャー(社会資本)を輸出して、経済成長の起爆剤にするという安倍晋三政権の構想が思い通りに進んでいないのは、これと似ている。相手国のニーズを適切に認識しない総理大臣官邸主導の「質の高いインフラ」路線が、限界を露呈し始めている。
 インフラ輸出の行き詰まりは、政府の「インフラシステム輸出戦略フォローアップシート」(二〇一六年度改訂版)からも窺える。列挙された二百六十項目もの課題のうち、約七五%の百九十七項目が「推進中」で、「実施中」「実施済」の少なさが際立つ。一二年末に安倍政権が復活してすぐ、内閣官房主導で経協インフラ戦略会議が発足して五年が経過した今も、「絵に描いた餅」のままだ。

前のめりなのは和泉洋人だけ

 例えば、インフラ輸出の中でも安倍政権が特に期待をかける鉄道事業は、アジア、欧州、米国などで年間約二十四兆円規模の市場があるとされる。その中・・・