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イラン「政権転覆」に本腰の米国

経済制裁と「反体制騒乱」支援の謀略

2018年8月号

「イランの行動や目的は、変わることはない。よって我々にとって唯一の解決方法は、イランの体制そのものを変えることだ」―。
 昨年七月一日、パリの北郊外ヴィルパントにある巨大なコンベンション・センターで、約四千の聴衆を前に銀色の口ひげが印象的な米国人が熱っぽく「イラン現体制の転覆」を訴えていた。
 演説の主は、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)。当時は、FOXなど米テレビのニュース番組のコメンテーターとして知られた「私人」だった。二〇一五年には『ニューヨーク・タイムズ』紙三月二十六日付で「イランの核爆弾を食い止めるために、イランを空爆せよ」と題したコラムを執筆するなど、長年ワシントンでは「対イラン強硬派」の代表格と見なされていた。
 しかもこの演説の場は、イランの「反体制亡命者集団」で、米国務省が一二年までテロリストに指定していた、イラン現体制の武力打倒を目指すムジャヒディン・ハルク(MEK)の政治集会。当然、この四月にボルトン補佐官が誕生した際は、トランプ政権がイランの「政権転覆」に向けて大きく舵を切るに違いないと誰もが予想した。だが今日・・・