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経済

「出光と創業家」遠い大団円

経営統合後も続く「難儀な関係」

2018年8月号

 噯気を催すような後味の悪さである。石油関係者からは一様に嘆息が漏れる。
「最後はカネか……」
 昭和シェル石油との経営統合をめぐり、足掛け三年に及んだ出光興産の創業家と経営陣の愛憎劇がようやく終幕を迎えた。七月十日、出光が発表した統合合意の条件は、①創業者・出光佐三が唱えた企業理念の堅持、②統合新会社となる出光に創業家側から取締役二人を選任の二点。とりわけ前者は、統合の形態を創業家が反対してきた対等合併から、株式交換による昭シェルの子会社化へ改めたことに具現されており、創業家の“名誉”を尊重した形だ。が、それ以上に重いのは“カネ”の条件である。
 出光は、統合を決議する年末の臨時株主総会までに一千二百万株(五・八%)の自社株買いを実施し、そのうえ、来年度から三カ年に目指す累計五千億円超の純利益の半分以上を、増配と自社株買いの株主還元に充てることを呑んだのだ。市場の反応は激しかった。発表当日の出光株は一時一八%高へ急伸、出来高五百四十万株の大商いとなった。ある証券関係者は刮目して見・・・