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経済

味の素と「ハゲタカ学術誌」の結託

詐欺的「がん検査」でボロ儲けの暴挙

2018年10月号

「ハゲタカジャーナル」と総称される粗悪学術誌が世界を席巻している。日本の研究機関から五千七十六本の論文がハゲタカジャーナルに掲載されていたと毎日新聞が報じ、そこには東京大学から発表された百三十二本の論文も含まれている。そもそも学術誌に論文が掲載されるには、専門家の査読を経なければならない。だがハゲタカジャーナルの場合、査読は形だけで、掲載の有無はカネで決まる。数十万円の掲載料と引き換えに、学術的に妥当でない論文も載せることができるのだ。科学的エビデンスがない危うい論文をカネしだいで掲載する名ばかりメディア。あろうことか、日本を代表する食品企業である「味の素」がその悪名高きハゲタカ学術誌を悪用していた。消費者への裏切りにほかならない詐欺的な行為は、いかにして敢行されたのか。
 ハゲタカジャーナルは二〇一三年ごろから増殖し始めた。最近は年間数百誌のペースで増えている。米コロラド大学デンバー校の図書館員ジェフリー・ビール准教授がハゲタカジャーナルのリストを公開してから、世間が認識するようになった。その名の通り、昇進や研究費獲得のために実績がほしい研究者の欲望と弱みにつけ込んだ新手の・・・

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