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経済

トヨタと中国 「燃料電池車」で密議

劣勢市場でシェア上昇の「秘策」

2018年10月号

 今や世界をリードする電気自動車(EV)大国、中国が密かにトヨタ自動車と燃料電池車(FCV)の開発・普及で協力関係を構築しつつある。FCVの要素技術の共同開発や部品の一部共通化などで低価格化を目指す戦略だ。中国政府はEVで世界トップを目指す戦略だが、「EVが増えすぎれば、充電インフラが追いつかない」(上海市政府関係者)という事情がある。既存の石油インフラを転用可能で、水素の充填時間も短いFCVを併用する二正面作戦に転換している。EVで出遅れたトヨタ側も、中国をFCV陣営にひき込むメリットは大きい。

EV急増の抑制策として

 中国のEVは昨年、五十二万台が販売され、世界の過半を占める圧倒的なトップであり、累積保有台数も百万台を突破している。販売台数は二〇二〇年には年間百万台を突破するのは確実で、累積一千万台は遠からず来る。
 だが、EV普及に欠かせない充電ステーションはEVの販売台数ほどには増えていない。今年春の段階で全国に十二万八千カ所、充電用のポール数で四十五万基にすぎない。充電ポール一基あたり二・・・