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政治

安倍一強という「幻影」

危ぶまれる早期の「死に体」化

2018年10月号

「まあ、こんなところじゃないかな」―。九月二十日午後五時過ぎ。直前に行われた自民党総裁選で三選を果たした首相安倍晋三は自民党本部四階の総裁室で側近らを前にこんな総括をしている。明らかに「圧勝」とは言い難い結果に悔しさがにじんだ。安倍は総裁選直前まで「これで石破さんの(首相の)芽はなくなりますよ」と周囲に漏らし、対立候補として名乗りを上げた元幹事長石破茂の政治生命を絶つことを狙っていた。
 官房長官の菅義偉も「安倍総理の入閣要請を断っておきながら今さら『排除の論理』と言って批判するのはおかしい」と敵意をむき出しにした。それは副総理兼財務相の麻生太郎、幹事長二階俊博も同じだ。総裁選の途中から話題が集中した農林水産相齋藤健に対する“恫喝”を口にしたのも、二階側近で幹事長代理の林幹雄説が有力だ。林は齋藤と同じ千葉県選出の衆院議員。齋藤が明かした恫喝の言い回しも林を彷彿とさせる。
「齋藤よ、内閣にいるんだろう。石破さんを応援するんだったら辞表を書いてからやれ」
 しかし、この恫喝は全くの逆効果の暴言となり、今回の総裁選を象徴するエピソードとし・・・