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連載

本に遇う 第227話

エンド・オブ・ウォー
河谷 史夫

2018年11月号

 時は流れ、人は入れ替わっていくから、清水幾太郎と言っても今や知る人も少ないかも知れない。往年の売れっ子評論家で、論文を量産した。六〇年安保のころは「反体制」の旗振りの一人で颯爽としていたが、やがて右旋回した。そのせいかどうか知らないが、いつか消息を聞かなくなった。
 忘れられた清水を持ち上げたのは山本夏彦である。政治的言動についてではなく、その文章論を賞賛したのであった。清水の『論文の書き方』と『私の文章作法』を高く評価し、自ら主宰する雑誌「室内」の編集部に採用した新入社員には『作法』を買って与えた。文章自修のためである。
「著者は、文章が書けるようになりたければ、他人の文のまねをするに限る。写せといっている」
 というのが文章作法の第一条である。山本も実践した。もっとも久世光彦に言わせれば、「山本翁はしょっちゅう同じことばかり書いていた」のだから、「自分の文のまね」をしていたことになる。
 第二条は「ある種の言葉が好きで、ある種の言葉のきらいな人は、文章が書けるようになる見込みがある。そして原点、出あい、かかわりあい、ふまえて、虚像と実像以下・・・