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ゴーンを生んだ仏経済「腐敗体質」

特権階級ほど私腹を肥やす国柄

2018年12月号

 日産の「皇帝」カルロス・ゴーン容疑者のとんでもない公私混同ぶりが次々と表面化しているが、フランス企業全体の水準で見ると、ゴーン疑惑は、金額を除けばそれほど突出していない。
 世界第六位の経済大国の経営者たちは、私腹を肥やし、業績に関係なく会社を渡り歩き、政治家と交じり、死ぬまで豊かに暮らす。「ミニ・ゴーン」だらけでもやっていけるのは、これまた腐った政府のおかげだからだ。

財界と政界の濃厚な癒着

 話は、仏ルノー社における「ゴーン後継」から始まる。
 新たに会社を率いるティエリー・ボロレ氏は、事件直前までウィキペディアのページもなかった、全く無名の人物だ。ただし、仏経済記者たちは、「まさか、あのボロレと関係があるのか?」という点で、取材に走った。
「あのボロレ」とは、仏メディア大手「ヴィヴェンディ」の会長だったヴァンサン・ボロレ氏である(ルノー社のティエリー氏とは遠縁)。
 メディア帝国のみか、運輸・通信など幅広い業務を手掛けるフランス経済の大立者で、日本で逮捕される前・・・