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WORLD

スイス「国際美術市場」の暗部

「狂乱オークション」と犯罪の震源地

2018年12月号

 スイスの国際都市ジュネーブ。空港から南に約七キロ、十五分ほど車を走らせると、鉄道車両基地のような多くの引き込み線がある一角に出る。
 そのそばには、看板のない、殺風景な倉庫の一群がある。監視カメラが多いこと、特定の倉庫には鉄条網があることを除くと、これといった特徴はない。
 この倉庫群こそ、世界の美術市場高騰の震源地である。
「ジュネーブ・フリーポート」と呼ばれ、あらゆる商品がここに輸入されれば課税を免れる。今や百万点とも百二十万点とも言われる、膨大な美術品がこの一角に保管されている。業界関係者の間では、「隠れた世界最大の美術館」と呼ばれるフリーポートこそ、美術市場を操るスーパーリッチの秘密である。

ダ・ヴィンチ「史上最高値」の秘密

 フリーポート出身で最大の「出世作」は、レオナルド・ダ・ヴィンチの「サルヴァトール・ムンディ(世界の救世主)」である。
 昨年十一月、ニューヨークの「クリスティーズ」で競売にかけられ、美術品の落札額としては史上最高額の四億五千三十一万二千・・・