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連載

《世界の キーパーソン》 崔鳳泰

徴用工問題を迷走させる「曲者」

2018年12月号

 韓国の大法院(最高裁)が十月三十日、日本の植民地時代に本土で強制的に働かされたことで精神的な苦痛を味わったとして、元徴用工に一人あたり一億ウォン(約一千万円)の損害賠償を払うよう、新日鐵住金に命じた。
 日本と韓国の報道陣が上を下への大騒ぎを繰り広げていたとき、三十日から三十一日にかけ、韓国のニュースチャンネルを「はしご」し、スタジオで、この判決がいかに偉大で意味のあるものかを力説した中年男性がいた。
 法務法人「三一」。韓国人なら一九一九年三月一日に始まった「日帝時代」に対する独立運動記念日にちなんだ名前だと直感する、事務所の代表者の一人、崔鳳泰弁護士(五十六)だ。ニュース専門チャンネルYTNでは「過去、二十年間、強制徴用被害者の補償のために闘ってきた」と紹介され、KBS放送では、自ら三十日の判決を「常識の勝利だ」と誇ってみせた。一九七〇年代から続く一連の徴用工や慰安婦、韓国人原爆被害者らがかかわった訴訟の経緯について細かく説明してもみせた。
 実際、一連の「戦後補償訴訟」で、崔弁護士の姿をみないケースはほとんどない。
 大法院で十一月二十九・・・