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北朝鮮「制裁解除」への邪欲

非核化「やらずぼったくり」の詐術

2019年1月号

 シンガポールで初の米朝首脳会談が行われてから半年が経過した。当初は朝鮮半島に残る冷戦構造の解体と平和構築への流れを定着させる転換点になるかとも期待された首脳会談だったが、非核化の具体的措置は一向に進まず、失速感は否めない。
 トランプ大統領やポンペオ国務長官は「今年一月か二月」の再会談に言及しているが、何を議題とし何を成果とするのかさえ、調整は進んでいない。
 失速の最大要因は、シンガポールで両首脳が署名した共同声明に沿った「取引」が空転しているためだ。非核化プロセスを具体化することが先決とする米国と、相応の措置、即ち制裁の緩和・解除を求める北朝鮮との交渉が難航している。
 共同声明には、「核なき北朝鮮」を担保するため「新たな米朝関係を確立」することが盛り込まれた。日米が北朝鮮の「体制保証」と呼ぶ安全保障の枠組み構築だ。
 この「新たな米朝関係」を確立するには、非核化による脅威の除去と制裁のない関係を整備することが前提となる。北朝鮮は、制裁の緩和・解除を米国の真意を測るリトマス試験紙と位置付けている。「自力更生」で堪え忍んでいる国内経済を、持続・・・