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貿易戦争は「米国の圧勝」に

中国の譲歩で「長期対立」回避

2019年1月号特別リポート

 トランプ大統領が常に口にするディールと、習近平主席が得意とする兵法が四つに組んだ形がいまの米中貿易戦争だろう。民主主義国の長所でもあり、短所でもあるが、ホワイトハウスは比較的に透明で、強硬論を貫くナバロ大統領補佐官(通商担当)、ライトハイザー通商代表部代表らと、国際協調路線を唱えるクドロー国家経済会議(NEC)委員長らとの対立が明るみに出ている。これに対し、一党独裁体制の下で中国の交渉者は劉鶴副首相一人に絞られている。その中ではっきりしてきたのは、中国側が危機の回避に向けて米側の感情を傷つけまいとひどく気を遣っている事実である。
 フォーリン・アフェアーズ(FA)誌二〇一九年一・二月号に中国の対外スポークスマンの役を演じる閻学通・清華大学教授が「不安定な平和の時代 分裂した世界における中国パワー」と題する論文を書き、北京の指導者たちがワシントンとの軍事的対決を避けようとしており、米中二極の国際情勢の中にあって中国は「ジュニア・スーパーパワー」(若手の超大国)の地位を続けるのだと慎重な表現を使った。経済、軍事、政治、技術、宣伝など国家が持つ機能のあらゆる点で「中国怪しからん」・・・