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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》 東大医学部附属病院

事故と不正まみれ「赤字経営」の惨状

2019年2月号

 東京のJR神田駅から北東へ五百メートルほど、岩本町三丁目の交差点そばの歩道に小さな石碑が建てられている。そこに刻まれているのは「お玉ヶ池種痘所記念碑 
東京大學醫學部」。今はオフィス街として賑わうこの地は碑文のとおり、東京大学医学部附属病院(東大病院)の発祥地である。時は一八五八(安政五)年のこと。以来、日本を代表する医療機関として名声を得てきた。だが、この名門病院で近年、医療過誤や不祥事が相次ぎ、優秀な医師や看護師が遁走する事態も頻発。患者からの評価もつるべ落としに下降、経営の悪化に拍車が掛かる負のスパイラルに陥っている。黄昏行く巨塔の深奥で一体、何が起きているのか。
 本誌は昨年十二月号で、東大病院を舞台とする「マイトラクリップ手術死亡事件」を詳述し、この件は直後に国会で取り上げられた。参議院厚生労働委員会で足立信也議員が「この報道が事実とすると完全に隠蔽だ」と糾弾した。その後、一月十六、十七両日にわたり、厚労省関東信越厚生局が立入調査に踏み切り、東京都福祉保健局も同時に調査に入った。

不祥事を隠蔽した者が「出世」・・・