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経済

トヨタ章男と一族の「愛憎劇」

分家筋「徹底排除」と次なる世襲

2019年2月号

 東京・青山の寺院で昨年十一月末、ある財界人の一周忌が執り行われた。その名は豊田達郎氏。かつて兄の章一郎氏の後を継いでトヨタ自動車の社長となったものの、脳梗塞に倒れ一線から身を引かざるを得なかった悲運の経営者である。豊田家の菩提寺は名古屋市内にある常楽寺だが、そこに納められる遺骨は直系の長男のみ。達郎氏自身は生前に買い求めていたここ青山の寺院で眠っている。法要には主だった親族が顔を揃えた。豊田一族の重鎮の一周忌だけに、それも当然だろう。実兄の章一郎氏夫妻はもちろん、姪の藤本厚子氏(章一郎氏の長女)、その家族ら豊田家親族が一堂に会した。
 だが一人だけ、この鎮魂の儀に姿を見せない人物がいた。トヨタを統べる豊田章男社長その人である。達郎氏の甥に当たる直系の嫡男。その章男氏は海外出張を理由に、事前に欠席を伝えていたが、事情を知らぬ親族の間からはこんな声が漏れてきた。
「章男さんはどうしたの? どうして来られないの?」
 こんな声に章男氏の実父、章一郎氏が淡々と答える。
「あれは海外出張で……」
 すると、親族の一人・・・