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WORLD

人民元「暴落危機」の緊迫

「成長なき中国」が凍らせる世界経済

2019年3月号

 人民元に再び暴落危機が迫っている。米中貿易戦争による輸出の落ち込みがもっぱら人民元下落の要因とみられているが、最大のリスクは中国経済に対する世界の認識転換だ。中国の成長が債務膨張と一部の民間企業の成功によって支えられてきた現実が世界に認識されれば、「人民元は割安」という神話が消え、〝債務の長城〟が目前に現れる。中国企業の六千億ドル(約六十六兆円)の対外債務の返済不能(デフォルト)が引き金となり、国内での連鎖デフォルトや外国の金融機関、サプライヤーの債権回収で、人民元は下落の坂道を転がり始めるだろう。
 昨年始まった米中貿易戦争で、人民元相場は米中協議に揺さぶられてきた。協議が前向きに進み、対立緩和の観測が流れれば上昇、追加関税継続の方向となれば下落という展開である。一月には緩和の予測が市場で強まり、人民元の対ドルレートは月間で二・六%も上昇したが、二月に入ってトランプ大統領の「習近平主席と会談はしない」との悲観的な発言で急落、一月の上昇分は相殺された。
 今年に入って、市場が注目しているのは中国の企業と地方政府のドル建て債券の償還。両者で七千億ドル以上にのぼり、そ・・・