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米国「同盟国切り捨て」の冷酷

加速度増すトランプ「孤立主義」

2019年3月号特別リポート

 米スタンフォード大学フーバー研究所のアジア問題専門家、マイケル・オースリン氏が米紙に「トランプのアジア重視策成功」と題する一文を書き、米国は当面アジアにとどまるから同盟諸国は安心していいとの趣旨の主張を展開しているが、それに気を許してしまっていい状況なのだろうか。オースリン氏は持論の根拠として上下両院が全会一致で可決し、昨年末にトランプ大統領が署名して成立した「アジア再保証イニシアチブ法」(ARIA)を挙げている。安全保障、外交関係の公式文書には確かに大統領のサインはあるが、現実は文書とは異なる大統領の言動がすべてにおいて優先している。
 二月十五日から十七日までの三日間ミュンヘンで開かれた欧州安全保障会議ではペンス米副大統領、ラブロフ・ロシア外相、楊潔篪・中国共産党中央政治局員ら大国の幹部の居並ぶ中でドイツのメルケル首相は、同盟国に酷薄な態度を取り続けるトランプ大統領の「一国主義」を槍玉に挙げて痛烈に批判した。突如シリアからの米軍撤兵を口にしたり、イラン核合意からの離脱など欧州の同盟諸国との歩調を乱すトランプ大統領へのあけすけな抗議に会場は沸いた。
 ARIAや・・・