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連載

をんな千一夜 第25話

「妻」として生き抜いた近代皇后
石井 妙子

2019年4月号

《久邇宮良子(香淳皇后)》

 秋篠宮眞子さまと小室圭さんの結婚をめぐって、世間はかまびすしい。
 迷惑を被った当事者でもないのに憤る人、憂い顔を見せる人が多いが、その実は皆、面白がっているだけだ。不敬罪もない平成の御代、皇室のスキャンダルは野ざらしで商品として消費されていく。
 状況はだいぶ異なるものの、婚約内定後に「ご結婚は辞退するべき」と相手側の親に迫って大問題になったことが過去にもあった。昭和天皇のご結婚時だ。当時は「宮中某重大事件」と内々に言われて、大っぴらには語れなかった。
 皇太子妃に久邇宮良子が内定したのは大正七年。皇太子(昭和天皇)は十六歳、良子はまだ十四歳。
 格式高い宮家の姫を未来の皇后として迎えられることを天皇家は当初、喜んでいた。
 ところが内定後、良子に「色盲」(当時の語を用いる)の親族がいることがわかり揉め始める。将来の天皇に、色盲の遺伝が出ることを案じたからだ。天皇は陸海軍の大元帥という位置づけにあるが、色覚に異常のある者は、軍人にはなれない決まりがあ・・・