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米露がベネズエラで「サイバー暗闘」

反米政権を巡るハイテク攻防戦

2019年5月号

 南米ベネズエラで三月七日、大規模な停電が発生して大きなニュースになった。国土の七割以上の地域で電気が失われ、インターネットが遮断されたり、断水も起きたりしたことで、略奪行為まで多発する大混乱となった。さらに同月二十九日にも三度目の停電が起きている。
 反米左派政権を率いるニコラス・マドゥロ大統領は、直ちに原因が米国によるサイバー攻撃であると主張。「これは初めて言うことだが……我々は、電力会社の内部を攻撃している〝侵入者〟が数多くいることから、是正や調査をしている段階にある」と述べ、「今回の電力網に対するサイバー攻撃は、米国のドナルド・トランプ大統領に責任がある」と非難した。
 だが欧米の多くの専門家は、この停電の背景に、国内電力のほとんどをまかなう水力発電所から変電所の間で林野火災があったと指摘した。さらに国内を中心に、二〇〇七年に国営化された電力分野における整備不良や、お粗末な管理に停電の原因があるとの声も上がった。マドゥロの「サイバー攻撃」発言は、自らの責任逃れのためのものであるとの指摘が多かった。
 しかし欧州のある政府・・・