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郭台銘は「台湾総統」になれるのか

中国共産党「代理人」の不透明な勝算

2019年5月号


 まさかの出馬表明に、台湾が揺れている。
 台風の目となりそうなのは、周知の通り、シャープを買収した台湾大手電子機器メーカー、鴻海精密工業の郭台銘会長だ。台湾の最大野党、国民党からの立候補を目指して予備選挙に挑み、夏にも党の公認候補に指名される公算が大きいと報じられている。
 政治経験のない著名企業家の指導者への転向は、トランプ米大統領と二重写し。もし郭氏の総統選のライバルが与党、民進党の現職総統である蔡英文氏になれば「政治素人の大物経営者VS経験豊富な女性政治家」。それは二〇一六年の米国大統領選挙、トランプ氏VSクリントン氏と同じ構図である。
 郭氏の最大の強みは、その経営手腕と世界に広がる幅広い人脈だ。国共内戦に敗れた蒋介石と一緒に台湾へ来た、極貧の外省人の子供として生を受けた。一九七四年に小さな下請け工場を立ち上げ、四十年で世界的企業にまで育てた。総統になれば、低迷する台湾の経済を立て直す救世主になると支持者の期待感が高まる。
 郭氏は国際的な知名度を誇り、米国に進出した際にトランプ大統領から「世界で最も偉大な企業家」と絶賛され・・・