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経済

二大商社の博打「北極圏LNG案件」

巨額国費も吸い込む「ロシアの泥沼」

2019年5月号

 昨年夏のことである。経済産業省の世耕弘成大臣は、莞爾としてこう切り出した。
「君、分かっているだろうね」
 謎を掛けられたのは、同省資源エネルギー庁の南亮資源・燃料部長。省内でも資源外交に通じた幹部であり、また欧州課長時代にロシアとの通商拡大にも携わっている。「だからこそ、君を登用したんだ」と言わんばかりに、世耕氏は指定職(資源・燃料部長)昇進を訓示したのだ。
 北極圏ロシアの巨大LNG(液化天然ガス)プロジェクト「アークティック2」―。そこへ三菱商事、三井物産に出資させ、日露経済協力の象徴として始動させることが、世耕氏が南氏に課したミッションにほかならない。
 当時は日露首脳会談が相次ぎ、北方領土への元島民の墓参りが実現するなど両国の友好関係が喧伝されていた。うまくすれば、今年六月の「G20大阪サミット」で北方領土返還に基本合意し、安倍晋三首相はその余勢を駆って衆参同日選挙に打って出る、といったシナリオが一部で観測され始めた時期だ。もっとも、ロシアは年明け後、態度を一転硬化させ、首相官邸の甘い期待は裏切られた。
 それでも、事ロシア・・・