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連載

Book Reviewing Globe 420

「ネット大長城」を築きたい中国

2019年5月号

 通信機器やAIをはじめとする中国の第四次産業革命の躍進はもとはといえば、シリコン・バレーがつくったようなものである。いま、中国が進める自国のインターネット空間を世界のネット空間から守る“ネット大長城”の建造にしても、それは“米国のレンガ”でできたといっても過言ではない。
 中国のお家芸となった国民監視のためのセンサーや監視機器は、一九九〇年代にシスコシステムズが中国に提供した技術を改良したものである。同じく九〇年代、チャイナテレコムがインターネットビジネスに進出するに当たっては米国のスプリントが支援。そこからCNCが起業され、江沢民の息子が役員に就任し、共産党上層部とネット企業の融合が始まった。
 しかも、シリコン・バレーは中国の公安と裏で手を握ることも辞さなかった。二〇〇四年、中国の公安当局は、天安門事件十五周年に際して政府を批判する論評を書いた湖南省長沙の中国人ジャーナリストが、ヤフーのアカウントからニューヨークにある民主活動団体にメールしたことをつかんだ。当局はヤフーにこのアカウントの主の身元情報とメール記録の・・・