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政治

令和の天皇「政治利用」の露骨

政権との「距離感」に早くも危惧の声

2019年6月号

 即位してひと月、早くも新天皇と安倍晋三首相の「距離感」を巡ってひと悶着起きた。
 五月十四日午前、閣議を終えた安倍首相は皇居へ向かい、天皇に内奏を行った。中身は非公表だが、同月二十七日に天皇が初めての国賓として迎えたトランプ米大統領との会見に備えての報告が中心だったことは間違いない。
 野党は、天皇が椅子から立って首相を迎える冒頭場面の映像がメディアに公表されたのは「首相官邸からの指示だったなら、皇室の政治利用だ」と騒いだが、ピントが外れている。
 内奏の映像は二〇一三年、上皇が八十歳の誕生日に際し、天皇の公務や日常生活の様子を写した映像資料で初めて公開された。この時の映像には、秘事の宮中祭祀である新嘗祭も含まれていた。天皇が日頃、何をしているのか国民に広く知ってもらいたいという前の天皇の意向だった。
 今回も「皇室広報の一環」という宮内庁の説明通りだ。上皇の時と同様、公表は天皇自身の意向がなければできない。事件は首相の「失言」を巡って起きた。

宮内庁次長の強い不快感

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