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経済

NTTドコモ「大幅減益」は死んだふり

「虚妄」の値下げで狙うV字回復

2019年6月号


 過去、抜きつ抜かれつの利益競争を展開してきたNTTドコモとKDDI―。両社の二〇一九年度営業利益が大きく明暗を分けることに、釈然としない通信関係者は少なくないだろう。
 KDDIの一兆二百億円(前年度比〇・六%増)の見通しに対し、ドコモは八千三百億円(同一八・一%減)と五期ぶりの減益予想。ポータルサイト大手、ヤフーを連結子会社化し、八千九百億円(同二三・七%増)の大幅増益を見込むソフトバンクにも抜かれ、携帯キャリア大手三社の中でトップシェア企業が最下位に沈むのだ。
「いや、今年度のドコモは“死んだふり”だ。官製値下げによる官製予算だから……」
 ある自民党関係者は密かに嘲弄の声を上げた。なるほど、ドコモの今年度の大幅減益は六月から実施の最大四割の料金値下げが主因だが、“四割”は昨年夏以来、執拗に大手三社を「儲けすぎ」と批判する官房長官、菅義偉が課していた値下げ幅である。これにいち早く呼応したドコモ社長の吉澤和弘は、昨年十月の時点で値下げによる「数年で四千億円の顧客還元・・・