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政治

自民党が画策する「野党再編」

改憲と「反共」で大連立を模索

2019年7月号

 繰り返した失敗の積み重ねに、さすがに学んだのだろう。総理大臣・安倍晋三の憲法改正戦略が、静かに、しかし、大きく転換されつつある。安倍政権下での改憲に反対する野党第一党、立憲民主党の代表・枝野幸男ら執行部を孤立させ、野党再編を仕掛ける。そんな荒業で、安倍の党総裁の任期中に改正憲法の施行を実現しようと目論んでいるのだ。
 第一次政権(二〇〇六~〇七年)や、一二年の政権復帰以降の安倍の改憲戦略は、基本的には自民党の勢力を増やし、憲法改正案の国会発議に必要な衆参両議院それぞれの三分の二の議席を確保しやすい政治状況を作ることだった。公言こそしないものの、憲法改正に慎重な公明党を切ることも念頭にある。
 第二次政権の当初は、ハードルの高い項目は改正の優先順位を下げるなど、野党も賛成しやすい「お試し改憲」を模索した時期もあったが、最近は「自衛隊の明記」を柱とする憲法九条改正に取り組む考えを強調するなど、より安倍の政治信条に近い中身が前面に出てくるようになった。野党第一党を巻き込み、政権交代があっても憲法の土台が揺るがないようにしておく大局的な発想は、どんどん失われていったのが実・・・