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経済

《クローズ・アップ》木村 康(日産自動車取締役会議長)

経産省に抜擢された「ズブの素人」

2019年7月号


「なぜ木村さんなのか……」
 日産自動車の取締役会議長に、旧日本石油出身のJXTGホールディングス(HD)相談役、木村康氏が就いた。しかし、仏ルノーと経営の主導権争いが続く日産が六月二十一日、その人事を発表したとき、不審を抱いた石油関係者は少なくない。
 メディアの関心は、ルノーのジャン=ドミニク・スナール会長、ティエリー・ボロレCEOの二人が曲折の末、日産新設の専門委員会に席を得たことに集中し、木村氏の人事は付随的な報道にとどまった。しかし、日産の取締役会が今後、ルノー首脳と西川廣人社長ら日産首脳の間で紛糾することは必至であり、取締役会議長はそれをまとめ、経営の方向性を裁定する重責である。果たして木村氏がふさわしいのか―。
 誠実な人柄は誰もが認める。それが、燃料油販売では大手企業や大手特約店に愛され、石油元売り最大手のトップに昇格、石油連盟会長、経団連副会長も務めた。逆に言えば、隘路を切り開く豪腕タイプではなく、まして海外事業の経験は皆無だ。「フランス語はまったく駄目。英語も挨拶程度で、得意なのは熊本弁」と、JX・・・