三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

《クローズ・アップ》小路明善(アサヒグループホールディングス社長)

「高値掴みM&A」連発の蛮勇

2019年8月号

 アサヒグループホールディングス(GHD)は七月、ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)が持つ豪州のビール会社、カールトン&ユナイテッド・ブルワリーズを百十三億ドル(一兆二千百億円)で買収することで合意した。
 アサヒは二〇一六年にABインベブの西欧ビール事業、一七年に同じく中・東欧ビール事業を買収し、今回も含めると三年足らずで総額二兆四千億円をABインベブに支払い、一気に欧州、オセアニアに事業基盤を築いた。そのすべてを子会社のアサヒビール社長時代から手がけてきたのが、アサヒGHDの小路明善社長だ。
 アサヒのM&Aの特徴はすでに成熟化した市場で、ブランドが定着し、売り上げが安定しているプレミアム・ビール企業を選んで買っている点だ。「ABインベブの持ち物なら安心」といった空気がアサヒ社内にはあるという。
 一八年十二月期決算によると、買収した西欧、中東欧の事業の売上高は合計四千六百五十五億円で、事業利益は八百十一億円。これだけをみれば高い利益をあげ、成功したM&Aのようにみえるが、買収に伴う狭義ののれん代は五千五百九億円・・・