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社会・文化

「人工肉」が世界の食卓を変える

米中でメーカー急成長の新産業

2019年8月号

 大豆、エンドウ豆など植物性タンパク質を原料に味、香り、食感などを本物そっくりにした人工肉が世界に急速に広がりつつある。米国の肉食忌避、健康志向や動物愛護運動、宗教規範などが推進力となっているが、アフリカ豚コレラなど畜産業を襲う伝染病リスクも影を落としている。長期的には世界人口の増大と肉食による〝穀物浪費〟、穀物増産に必要な淡水資源確保の問題もある。一方、米国では人工肉メーカーの急成長など新産業として投資家が色めき立っている。
 米アマゾンが買収した高級食品スーパーチェーン、ホールフーズ。米国全土に展開する店舗のうちニューヨーク、ボストンや西海岸などの一部の店で、昨年六月から「ザ・ビヨンド・バーガー」と書かれた大豆など植物のみを原料とするハンバーガー用パテが食肉売り場に並び始めた。本物の牛肉のバーガー用パテと隣り合わせで置かれても、グリーンの活字で「PLANT-BASED(植物由来)」と表示されていなければ見分けはつかない。
 米国のバーガーキングは今年四月、「インポッシブル・ワッパー」と名付けられた食肉を一切使わないハンバーガーを発売した。ボリューム感や味、香りは・・・