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社会・文化

松下政経塾の侘しき黄昏

祝いムードなき「周年」の現実

2019年8月号

 松下電器産業(現パナソニック)創業者の松下幸之助が一九七九年、神奈川県茅ヶ崎市に創設した次世代指導者の育成を目的とする公益財団法人「松下政経塾」は今年、四十周年を迎えた。吉田松陰が創設し、幕末に幾多の指導者を輩出した私塾になぞらえ「現代の松下村塾」ともてはやされたのも今は昔のこと。創立から四十年の今、その影は薄く、往年の面影もない。「経営の神様」が掲げた「次代の国家指導者を育成する」という高邁な志が遠のく。

「軽薄」「無責任」「無節操」の烙印

 七月二十一日投開票の参院選では松下政経塾の卒業生六人が挑み、四人が当選した。長浜博行(立憲民主党、千葉)、松沢成文(日本維新の会、神奈川)、赤池誠章(自民党、比例区)、森本真治(無所属、広島)の各氏。中田宏(自民党、比例区)、二之湯武史(自民党、滋賀)両氏は苦杯をなめた。
 この結果は一般的にみて悪くない成績だが、塾の関係者の間で高揚感は全くない。その理由は、出馬した六人全員が現職か元職の国会議員で、いわば「手垢のついた面々」(塾OB)だからだ。
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