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「印パ危機」を煽る イスラエル

南アジア「紛争激化」の元凶

2019年9月号

 インドは八月五日、住民の大半がイスラム教徒で、インドからの独立あるいはパキスタンへの編入を求める勢力との間で長年紛争状態にあるジャンムー・カシミール州に数万人の軍隊と警察を派遣して、憲法で定めた同州の自治権をはく奪した。
 これによってパキスタンとの軍事的緊張がエスカレートし、国際的にインドに対する非難が高まる中で、イスラエル政府は翌六日、異例にも「ネタニヤフ首相の九月初旬のインド公式訪問」を発表した。この時期の発表は、インドに対するイスラエルの明確な支持姿勢を示すものであろう。
 今回の強硬措置の伏線と言えるのが、二月二十六日にインド空軍がカシミール地方と接するパキスタン領バラコットに加えた空爆だが、そこでもイスラエルの影が見える。その十二日前にカシミールで起きた、パキスタンのイスラム過激派によるとされるインド武装警察隊員四十四人が死亡した自爆攻撃の報復で、バラコットの「テロリスト訓練施設」にインド空軍のミラージュ2000戦闘機が精密誘導爆弾を投下したが、その爆弾もイスラエル製だった。
 これまで何度も起きている武力衝突で、インドがパキスタンを精密誘導・・・