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経済

トヨタ「曙ブレーキ」見殺しの残酷

下請け再建支援「拒否」する筆頭株主

2019年9月号

「いまの計画案では業績のV字回復は期待薄。残債回収への不安が否めない以上、容易に賛成し難い」。ある地銀幹部は苦衷をにじませつつ、こう吐き捨てる。
 事業再建計画案の決議に向けた債権者会議が九月十八日に迫った曙ブレーキ工業。取引金融機関への総額五百六十億円の債権放棄要請を含む再建案への賛否が、その場で問われることになる。だが、日銀のマイナス金利政策などで収益基盤の揺らぐなか、債権放棄に伴う与信コストの負担増が、体力のさらなる摩滅要因となりかねない地銀などが強く反発。みずほ銀行をはじめ主力五行も「必ずしも一枚岩ではない」(金融筋)とされている。一行・一社でも反対に回れば事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)は空中分解だ。曙ブレーキの法的整理も視野に入る。
 同社の取引金融機関は商工中金を含む二十九行と四生保にJAバンク大阪信連。求めているのは一律五二・五%もの大幅債権カットだ。債権放棄後の残債にかかる弁済条件も相当に厳しい。七月二十二日の債権者会議で曙ブレーキ側が示した当初案では、一定の現金収支が生まれない限り二〇二四年三月期まで返済なしとされていた。さすがにこれでは受け・・・