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社会・文化

昭和天皇「拝謁記」 NHK報道の異様

なぜ「戦争への反省」に偏向したか

2019年9月号

「歴史にイフ(もし~だったら)はない」という言い回しは、多くの場合、その後に「イフ」を持ち出すためのお断りや言い訳に使われることがほとんどだ。それもやむを得まい。これは歴史的事実の原因を客観的に探求する職業歴史家への戒めなのだから。裏を返せば、歴史家でない者たちの歴史の回想は、往々にして事実と異なる起こり得たかも知れない期待を空想したり、実現しなかった希望への未練として語られたりすることが、いかに多いことか。
 令和になって初めての終戦記念日は、「反省」がキーワードになった。天皇陛下が全国戦没者追悼式のおことばで平成以来の「深い反省」を踏襲したことに加え、NHKがスクープした昭和天皇に関する新資料を巡り、「戦争への反省」が繰り返しニュースとして報道されたからである。
 戦後、宮内府から宮内庁に改組される時期に、民間から抜てきされ初代長官を務めた田島道治が、在任中(一九四八~五三年)の約五年間、昭和天皇との約六百回に及ぶ一対一の面談におけるやり取りを手帳やノートに私的に記録していた。保管していた遺族の提供で、令和への改元を機に一部が初めて公開された。
 昭和・・・