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経済

《企業研究》FM東京

名門ラジオ局の「粉飾決算」と経営危機

2019年9月号

 損失を抱えた子会社を意図的に連結対象から除外し、財務諸表を化粧する―。バブル崩壊後の不良債権処理に追われた銀行界で横行した粉飾決算の古典的手口、いわゆる「飛ばし」の一形態とみてもよかろう。
 不正会計が発覚した名門ラジオ局のエフエム東京(FM東京)。ラジオをデジタルで放送する新事業で生じた赤字を隠蔽することを目的に、同事業を展開する問題子会社の株式を外部企業に売却したように装って連結決算から外す「インチキ株取引」(FM東京関係者)が行われていたというもので、一連のプロセスを調査していた第三者委員会の報告書によると、経営トップの主導による「組織的行為」だったという。
 不正の舞台となったのはデジタル放送事業「i‐dio(アイディオ)」を手がけるグループ子会社「TOKYO SMARTCAST(東京スマートキャスト、TS)」。東京や大阪などで同放送がスタートした直後の二〇一七年三月期決算からはじまった。具体的には当時、FM東京の社長を務めていた千代勝美氏が知人の会社に依頼。TSに対し三千株、一・五億円の出資を仰ぎ、FM東京の議決権比率を引き下げる形で連結外しが企てられた・・・