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社会・文化

危ない「再生医療」が蔓延る日本

科学誌『ネイチャー』が鳴らす警鐘

2019年12月号

 日本の医学研究の信頼が地に落ちようとしている。問題となっているのは、今国会で成立した改正医薬品医療機器等法(薬機法)で「条件付き早期承認制度」が法制化されたことだ。この制度を利用すると、再生医療に用いる製品は被験者たった数例の治験で安全性を確認し、有効性が「推定」できれば条件付きで承認される。医薬品承認の標準である無作為化対照二重盲検試験は求められなくなる。
 実は、この制度は既に運用されている。二〇一三年十一月に再生医療等安全性確保法と改正薬事法が成立し、「通知で運用してきた」(厚生労働官僚)。一五年九月には最初のケースが承認されている。テルモが開発した虚血性心疾患治療製品「ハートシート」だ。治験は国内の三施設で実施され、症例数はわずかに七例。この程度で有効性や安全性がわかるはずがない。
 世界からも批判が殺到している。英科学誌『ネイチャー』は九月二十五日に「日本は、幹細胞療法に関わる行政政策を見直すべきだ」という巻頭言、および四ページにわたる「再生医療:量産される幹細胞療法」という論文を掲載した。
 今回の法改正の目的は「通知では審査ミスや副作用が出・・・