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WORLD

中南米を再び覆う 「失われた十年」

政治・経済「ダブル危機」の国だらけ

2019年12月号

 中南米が燃えている。恒常的窮状のベネズエラに加え、今秋はチリ、ボリビア、エクアドルなどで一斉に、大規模な反政府デモが起こった。地域の大国ブラジル、メキシコも経済不振で、新たな騒乱が懸念される。
 中南米では一九八〇年代に、国家破産(デフォルト)の嵐が吹き荒れ、「失われた十年」と形容された。中南米の成長率は過去二十年にわたり、新興国・発展途上国の平均を下回っている。「失われた二十年」や「第二の失われた十年」といった見方が、世界のエコノミストの間で強まり始めた。
 チリの首都サンティアゴの市民は今秋、タイムトラベルのような経験をした。
 地下鉄運賃の値上げという、一見するとささいな決定から、あっという間に抗議デモが広がった。当局は、アウグスト・ピノチェト軍政以来の「夜間外出禁止令」を発動した。この間、警察署や留置場で被拘束者に対して、暴行や拷問、性的暴力があったとの訴えが相次ぎ、市民の怒りが拡大した。
 セバスチャン・ピニェラ大統領は十月下旬、「全く見通しが甘かった。まことに申し訳ありません」とテレビで平謝り。それでも数日後、サンティアゴ中心部に百・・・