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政治

安倍政権も触れぬ 「日米地位協定」

米軍機「違反横行」でも沈黙の官邸

2019年12月号

 安倍政権がその振る舞いとは裏腹に、米国に隷従している内実を象徴したのが、米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)の戦闘機部隊で発覚した手放し操縦などの違反の数々への対応である。いくら違反を働いても、米軍の特権的な地位を定めた日米地位協定により、日本政府は「物言えば唇寒し」と言わんばかりに口をつぐむ。実は、今回の不祥事と禁秘の協定の余波が日豪関係にも影を落としている。
 それは、自衛隊とオーストラリア軍が共同訓練や災害派遣で相手国を訪問する際の法的地位を定める「訪問部隊地位協定」(VFA)を巡る調整だ。岩国基地の不祥事の余波で、VFA締結は暗礁に乗り上げ、その後に控える自衛隊と英国軍の日英VFAも全く見通しが立たない。

政府の恐れる最悪シナリオ

 大手メディアは、豪州が死刑を廃止しており、日本国内で罪を犯した豪軍関係者に死刑が適用されるケースへの懸念が強いと報じている。だが、外務省関係者は「それは各論の話で、問題の核心ではない」と指摘し、最悪の展開に怯えている。どういうことか。日豪のVFAは国会で承認されて・・・