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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》東京五輪「サイバー防衛」

ロシア「大会排除」で報復の脅威

2019年12月号

 昨年、初めて年間三千万人を突破した外国人訪日客数は、今年も概ね前年を上回る数字で推移している。来年の東京五輪・パラリンピックに向けて、日本を目指す人はさらに増えるが、来るのは善男善女ばかりではない。好ましからざる人物だけでなく、テロなどの危険性も「インバウンド」する。それは、なにも実社会だけでなく、サイバー空間でも同様だ。否、むしろ五輪に向け、ネット上でのリスクが増大していることが見落とされている。
 二〇一八年二月九日、韓国北部の平昌で冬季五輪の開会式が華々しく開催された。二時間に及ぶ式典ではプロジェクション・マッピングなどが駆使され、会場にいる三万五千人の観衆だけでなく、世界中の視聴者を魅了した。
 そんな壮大なイベントの裏で、深刻な事態が発生していたことはあまり知られていない。
 会場となった平昌オリンピックスタジアムでは、サイバー攻撃で入場ゲートがダウンし、手作業で対応。また開会式前から公式サイトやアプリが不具合を起こし、チケットが発券できず入場できない人も出た。プレスルームではWi―Fiが機能しない事態が起き、選手村やスタジアム周辺などで開会式・・・