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WORLD

「感染症」が変える世界経済

「コロナショック」の重い教訓

2020年3月号

 中国の初期対応に問題があったからだろうか。新型コロナウイルスは、ついに世界での蔓延が懸念される局面となった。ひとつはっきりしているのは企業のグローバルな生産・調達体制が今後大きく転換することである。中国及び周辺アジア諸国に生産拠点が集中するリスクは一段と明白になり、製造業は「大規模集中」から「小規模分散」へ、ICT業界の用語を借りるならば「エッジ生産」への転換を進める。IoTの進化でエッジ生産を支える基盤は整いつつある。日米など先進国が自国の雇用拡大のため政策的に工場を引き戻す動きも強まるだろう。中国経済にとって感染症に並ぶ空洞化の危機が迫り、それは消費や観光の需要減を招き、世界に影響を及ぼす。
「地元政府の許可を得て、三十数人の従業員に通常の三倍の時給を出して出社してもらい、欠品部品の生産ラインだけ動かしている」。江蘇省蘇州市郊外の開発区に立地する日本の電子・電機系メーカーの現地法人社長は暖房も入らない総経理室(社長室)で、ダウンジャケットを着込んだままこう話す。
 周辺の工場はほぼ休業しているが、この企業は生産している部品が日本、ベトナム、米国などの納入先で既・・・