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経済

ゴーン無き「ルノー・日産」の零落

独裁者追放で「喪失」したもの

2020年3月号

 ルノー・日産・三菱グループに君臨したカルロス・ゴーン被告がレバノンに逃亡してから二カ月。日本社会の同被告への評価は否定的なものに定まった感がある。逃亡の事実が会社資金の私的流用、所得の過少申告など不正を自ら認めたと受け止められているからだ。日本の司法制度批判も、日本はもちろん米欧でも自己弁護としか見られなくなった。だが、ゴーン被告が去った日産自動車の業績もまた悪化の一途をたどっている。「アフター・ゴーン」の売上高は二年間で一五%も減少、社内の士気は下がり、新技術、新車、マーケティング戦略はいずれも精彩を欠く。ルノーとの連携も空中分解に向かっている。
 ゴーン被告が日産のトップとしてフルに経営に関与した最後の年度である二〇一八年三月期の連結売上高は十一兆九千五百十二億円。ゴーン被告がまったく関わらなくなった二〇年三月期(予想)は十兆二千億円。わずか二期の間に売上高は一兆七千五百億円も落ち込んだ。販売台数は五百七十七万台から五百五万台(予想)と七十万台の減少。連結営業利益にいたっては七分の一に縮小した。一九年十︱十二月期は最終損益が二百六十億円の赤字とリーマンショック以来の赤字・・・