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社会・文化

アカデミー賞が遠い「日本映画」

業界は「黄金期」の只中なのに

2020年3月号

「日本の映画界は恵まれている。人口減少でも市場は縮小していないし、当分は安泰ではないか」
 某大手出版社で映像コンテンツ関連の部署にいる社員はこう語る。
 今年のアカデミー賞で四部門の賞と話題をさらった韓国映画「パラサイト~半地下の家族」は、日本国内での同映画の興行成績も上々で、テレビなどではポン・ジュノ監督について特集が組まれた。日本にもこれまでクロサワやオヅなど「世界で評価される」映画監督はいたが、アカデミー賞では外国語映画やアニメーション、短編ドキュメンタリー部門で受賞、ノミネートされる程度にとどまっていた。映画評論家の一人は語る。
「日本からポン・ジュノは出てこない。国内の映画業界は良くも悪くもそういう土壌だ」
 その理由は、冒頭の出版社社員の言葉も大いに関係する。映画製作者にとって、恵まれながらも大きく化けることができない、特殊な日本映画界がそこにはある。

製作委員会方式という「癌」

 一月二十八日に発表された二〇一九年の国内年間興行収入は約二千六百十二億円だ・・・