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社会・文化

コロナ治療薬「開発競争」の最前線

東京「延期」五輪に間に合うか

2020年4月号

 パンデミックの脅威にさらされた世界中が、一日も早く実現を望むのが、新型コロナウイルスの治療薬とワクチンの開発だ。
 中国を舞台に、中国と欧米のメガファーマが激しい競争を繰り広げている。特効薬やワクチンの開発はどの程度進捗し、見通しはどうなっているのか。日本人の最大関心事である、延期された東京オリンピック開催に間に合うのか否かなど、最前線の様子を伝えよう。

注目される米ギリアドの臨床試験

 現在、世界の製薬業界が最も注目しているのは米ギリアド・サイエンシズ社の動向だ。
 同社は一九八七年創業の製薬企業で、HIV、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザなどを治療する抗ウイルス剤を開発してきた。商品名タミフルで有名なオセルタミビルの世界特許も有している。
 同社が新型コロナウイルス治療に投入したのが「レムデシビル」だ。これは、エボラウイルスとマールブルグウイルスに対して開発を試みたが失敗した化合物。ただ細胞実験や動物実験の段階ではあるが、SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼・・・