三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

経済

中小企業「金融支援」のデタラメ

また血税が「不良債権の山」に

2020年5月号

 「まるで他人事だ」と、官邸官僚の一部からは義憤の声が上がる。
 四月八日、新型コロナウイルス蔓延の緊急事態宣言発令の翌日に首相官邸で開かれた政府と金融機関の首脳会談―。首相・安倍晋三が中小零細企業への資金繰り支援を要請すると、全国銀行協会会長の三毛兼承(三菱UFJ銀行頭取)は得々とこう応じたのだ。
「政策金融への融資申し込みが急増していることを踏まえ、すでに民間金融機関でも書類を整える“協力”を始めております」
 協力? いかにも自分たちは当事者ではないという口吻である。政府が日本政策金融公庫、商工組合中央金庫による無利子無担保の特別融資を軸に、四十五兆円の資金繰り支援を今年度補正予算案に盛り込んだことは周知の通り。日本公庫には一日一・五万件もの申請が殺到し、窓口はパンク状態だが、政府は今回、民間金融機関も史上初めて無利子無担保融資を実行できる政策措置を講じた。
 ところが現在、メガバンク、地銀、信金信組で行われているのは中小企業顧客の政策金融への押し込みである。政府の特別融資を説明し、ご丁寧に書類の書き方まで教えて日本・・・