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経済

《クローズ・アップ》安永 竜夫(三井物産社長)

本業危機の中「財界ごっこ」に転身

2020年5月号

 五月一日発表の二〇一九年度連結決算で、三井物産は今年度の純利益予想をどう弾いただろうか。
 米WTI先物がマイナス相場となるほどの空前の原油価格暴落に見舞われ、これまで社長の安永竜夫自ら指揮を執り、油田開発に積極投資してきた三井物産はまさに暗中模索と言っていい。しかも、安永にとって今年度は在任六年目のトップ最後の年。有終の美を飾るどころか、総合商社三位を指定席にした社長として不名誉な退任を余儀なくされるだろう。が、その悲運に同情の声はない。
「さすがに当社も無傷ではいられない」
 安永は、三月二十七日付の日本経済新聞のインタビュー記事で一バレル二十ドル台へ下落した油価に触れ、つい口を滑らせたのだ。記事を見咎めた東京証券取引所に「リスクがあるなら適時開示しろ」と迫られ、三井物産は同日、一九年度純利益の五百億~七百億円減額見通しを表明させられた。これを機に五大商社の株価は“連れ安”が加速、しかも、下げ幅は三井物産よりも減額修正していない三菱商事、伊藤忠商事の方が大きい。上位二社には「迷惑も甚だしい」と怨嗟が渦巻いた。
 今回・・・